2016年10月2日日曜日

ステンレス包丁 柄の修理

2016.Oct.02

 同僚からたまに包丁砥ぎを頼まれる。

 切れない包丁が切れるようになるは好きなのと、やればやるほど自分の技術が上がるので楽しい。
包丁の柄の修理



 今回は預かった包丁の柄が割れていた。砥ぐついでに柄の修理もする?っと尋ねたら、お願いとのこと。今まで5~6本ほど同様の修理はしてきたのでコツは覚えている。

グリップの前部が欠けている。

目釘(リベット)の所からの破断。

アルミリベットも腐食している。

こちらの面は大丈夫。

破断した面。

 まずは、柄の黒いプラスチックを外す。

 外し方は、これだけ傷んでいるので簡単。包丁の柄を作業台に押し当て、包丁全体を軽く湾曲させる。グリップの端に浮きが出るのでそこにマイクロドライバを差し込む。出来た隙間にマイナスドライバを差し込んでねじって剥がしていく。アルミリベットも簡単に外れる。

グリップを外したところ。

 プラスチック・グリップを外したところ、錆と汚れ、粘度の高い水分が溜まっていた。あまりにベタベタがひどいので、洗剤とスカッチブライトで洗浄した。

スカッチブライトで洗ったあと①

スカッチブライトで洗ったあと②

 
 手持ちの木材が傷んでいたのでホームセンターで硬い木を探したが、見つからない。店員にも相談したが沖縄では厳しいようだ。やむを得ずつるはしの柄が硬くて安かったので購入した。これ一本あれば今後も困らない。

つるはしの柄。1280円。
丸鋸でつるはしの柄の一部を切り出し、電動カンナで厚みと面を出す。


切り出した木材を電動カンナで成形。
板材が小さいのでべニアとコースレッドで
逃げないように工夫する。

 できた板に包丁を合わせてマジックで大まかなラインを引く。

カットラインを引く。
ただし、このラインより外側をカットする。

 材料が小さいので、丸鋸やジグソーは使えなかったので、ディスクグラインダーに金属用切断砥石を付けカットラインの外側をカットする。

 包丁と木材を合わせて、厚みを測り、厚みより長めに真鍮の棒材をカットする。この真鍮の棒が新しい目釘となる。

 もともと使われていたアルミリベットの直径は4mm。包丁の穴は4.5mmの楕円、5mm、4mmとまちまちであった。包丁の刃をべニアで挟んでコースレッドで固定し、ドリルドライバで穴を5mmに広げる。5mm径の真鍮棒がぎりぎり通るのを確認し、木材にも穴あけを行う。この時のポイントは、木材を下に置き、包丁を上からあてがい、包丁の穴の上からまっすぐにドリルを入れていくこと。まずは1本開け、真鍮棒を入れて木材と包丁がずれないように固定しながら、2本目を開ける。また、真鍮棒を入れて3本目を開ける。こうすると木材の穴の位置は包丁の穴とぴったり一致する。

 包丁の柄の部分の錆と汚れをディスクグラインダーにペーパーディスクを取り付け研磨する。
 この時、鏡面仕上げは行わず、荒いままに研磨を終わる。理由はこの後接着剤を塗布して、木材で挟み込むので、接着力を上げる為である。

カットラインの外側で切った木材と真鍮の棒。

 エポキシ系接着剤を練り、包丁と木材に薄く塗布し、真鍮のピンを入れながら貼り合わせる。その後、クランプで締めて一晩放置する。

接着剤で貼り合わせて、クランプで固定。

ずれないようにと、接着剤で穴がふさがるので、
この状態で真鍮のピンを入れておく。

真鍮のピンは両側にはみ出すように入れる。

 接着剤の硬化後、金床(アンビル)や万力などの硬く平らな所を利用して、真鍮のピンをハンマーで叩く。少しずつ叩きながら、ピンの状態を確認する。ピンが長すぎるときはディスクグラインダーと切断砥石でカットしながら長さを調整して叩く。この時のポイントは、あまり叩きすぎてピンが太くなりすぎると木材が割れてしまう。叩き方が足りないと、穴に隙間が残る。

接着剤硬化後。

切断砥石で切ったので、切断面が焦げている。

 ピンがしっかり打ち終わったら、切断砥石で余分なピンをカットする。この後、もう少しピンを叩く。


 ディスクグラインダーに荒めのペーパーディスクを付け、包丁の金属のラインまで木材を削る。次に目の細かいペーパーディスクに交換し、真鍮ピンの出ている面や柄の角落としなどを行い元のグリップと同じ形にする。

大まかな面取りを行ったところ。
これからきちんと整形する。

 整形後は、サンドペーパーできれいにし、ウレタンニスを塗布。数時間をあけて3回塗った。

 ニスは厚塗りしてあるので、乾燥後目の細かいサンドペーパーで凹凸を取り、コンパウンドで研磨する。

 これで柄の修理は完了。

柄の修理完了。

もっと色の濃い材木があれば良かったのだが・・・。

木材にニスを塗る前に、染太郎で黒く着色することも
考えたが、使用中に傷が入ったとき、
傷が目立つことになるのでやめた。



 下の2枚の写真は使用後の真鍮のピンのサイズである。結構太くつぶれてくれている。


上に当てている真鍮棒が使用した5mm径の棒材。

6.5~7mm程度まで太くなっている。

 柄の修理が終わったので、次は包丁の砥ぎである。預かった状態は結構刃こぼれがあるが、まあ通常の傷み方である。刃こぼれが大きいと、サンダーで修正後砥ぐ必要があるが、今回はその必要はない。

 荒砥で修正後、並砥、仕上げで終了。


預かったままの刃の状態。
タッチアップした跡が見られたが…。

砥ぎ終わり。

刃先は鋭角に、元(柄の方)は少し鈍角に砥ぐ。

 包丁を砥ぐ時は大体、刃の元の方は押切り等で硬い物を切る、刃先は細かい切りに使うように角度を少し変えている。つまり刃の元は少し鈍角に、刃先は鋭角に砥ぐ。包丁の刃を指で触り、切れ味が出ているようなら(指を切ってみるのではない)終了。これで腕の毛も剃れる。




 包丁の修理を行いながら、よく考えることがある。

 今、修理している包丁の行く末である。まず、修理した箇所が再び壊れないことを願いつつ、砥げなくなるまで末永く大切に使ってもらえるよう思いを込めている。旅に出る我が子を思う気持ちに近い。どんな台所で、どんな料理の手伝いをし、どんな家族の声を聞きながらどれだけの時間を使われていくのか。出来れば子供の代まで使ってもらわれるといいのだが・・・。


 今回、柄の修理に使用した工具は、
 1. マイクロドライバとマイナスドライバ
 2. ディスクグラインダーと切断砥石、ペーパーディスク2種類
 3. 丸鋸
 4. 電動カンナ
 5. クランプ
 6. サンドペーパー

 材料は、
 1. 硬い木材
 2. コニシ エポキシ系接着剤 ボンドEセット
 3. 5mm径真鍮棒材
 4. アサヒペン 1液型ウレタンニス(クリア)

 である。

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 調理に使うのだからボンドとかニスとか大丈夫ですか?という人もいるかもしれないが、材料を食べるのでないし、猛毒なものでもない。(20年程前、土曜の夜に歯が欠けたことがあった。当時は週末に開いている歯科医は皆無。欠けた歯が舌に当たり痛くてたまらない。5分間硬化型のエポキシ系接着充填剤「クイックメンダー」を欠けた所に塗り、蓋をして過ごしたことがあった。健康被害も皆無。ただし、歯科医にはなかなか接着剤が取れないと叱られたが・・・)

 それ以前に、包丁の柄の修理を行うと必ず、柄のグリップと刃材との隙間の汚れのすごさに驚く。いくら洗っても洗えない隙間。錆だけでなく、洗剤、食材の汁、油が混ざって乾ききれずに熟成している。細菌の住処である。この汁が調理中に流れ出ているのだから、人間はそれほど弱くない。

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